みなさん、こんにちは!ジャズの歴史とジャンルをわかりやすく解説するシリーズ、第7回の主役は、モダン・ジャズの知性が最高潮に達した最先端のスタイル、『新主流派(ポスト・バップ / Post-Bop)』です!
前回ご紹介した「モード・ジャズ」は、ガチガチのコード進行を捨てて自由でクールな空間を手に入れた、マイルス・デイヴィスによる世紀の革命でした。
その扉が開かれた1960年代、マイルスの元に集まった20代の若い天才ミュージシャンたちはこう考えました。
「モードの知的な自由さは最高だ。でも、ハード・バップにあった『熱いエネルギー』や『強烈なリズム』も組み合わせたら、もっとヤバい音楽ができるんじゃないか?」
こうして、これまでのジャズの美味しいところをすべて融合させ、現代のジャズに直結する「最高にスタイリッシュでシブい響き」を完成させたのが『新主流派』です。今聴いても全く古びない、都会的でスリリングな世界へご案内します!
新主流派(ポスト・バップ)ってどんな音楽?3つの魅力
古い殻を破り、1960年代の空気感をまとって進化した新主流派。その特徴を3つに凝縮して解説します。
① 「知性」と「熱狂」の奇跡的なハイブリッド
モード・ジャズのミステリアスで洗練されたコード(和音)の響きを使いながら、ドラムやベースはハード・バップのように熱く、ダイナミックに躍動します。 冷たい頭脳と熱いハートが同居したような、ゾクゾクするような緊迫感が最大の魅力です。
② 伝説の「黄金クインテット」が流行の発信源
このブームを引っ張ったのは、やはり帝王マイルス・デイヴィスが率いた1960年代のバンド(通称:第2期黄金クインテット)の若手メンバーたちでした。 天才ピアニストのハービー・ハンコック、サックスのウェイン・ショーターなど、彼らがマイルスのバンドで実験した最先端のアイデアを、それぞれのソロアルバムで大爆発させたことで、ジャズ界の「新しい主流」となったのです。
③ 名門ブルーノート・レーベルの「4000番台」の美学
この時代の新主流派のサウンドを語る上で欠かせないのが、名門レーベル「ブルーノート」です。 特にカタログ番号が「4000番台」と呼ばれる1960年代のレコード群には、ジャケットデザインから音の響きに至るまで、都会的で影のある、最高にクールな美学が貫かれています。
これを聴けば間違いなく通!新主流派の傑作名盤4選
現代のジャズバーやセレクトショップで流れていてもおかしくない、時代を超越した格好良さを持つ4枚を厳選しました。
① 誰もが一度は耳にしたことがある、新主流派最大のヒット作
- アーティスト名: ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)
- アルバム名: 『Empyrean Isles』
天才ピアニスト、ハービー・ハンコックが24歳の時に放った、新主流派を代表する傑作です。 なんといっても、のちにアシッド・ジャズやヒップホップの素材としても世界中でサンプリングされた超名曲『Cantaloupe Island(カンタロープ・アイランド)』が収録されています。怪しげでファンキーなピアノのリズムと、モーダルで知的なメロディが完璧に融合した、初心者にも自信を持っておすすめできる1枚です。
② 漆黒の闇と洗練された美しさが同居する、サックスの最高峰
- アーティスト名: ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)
- アルバム名: 『Speak No Evil』
新主流派の最大のメロディメーカーであり、不思議な浮遊感を持つ曲を作らせたら右に出る者はいないサックス奏者、ウェイン・ショーターの最高傑作です。 アルバムタイトルの「悪を言わざる(見ざる・聞かざる・言わざる)」というミステリアスなテーマ通り、どこか夜の都会の影を感じさせる、ダークで、かつ妖艶に美しいメロディが次々と飛び出します。ジャズファンが「一番シブいサックス盤は?」と聞かれたら、高確率で名前を挙げる聖典です。
③ ピアノの鍵盤が火花を散らす、圧倒的なエネルギー
- アーティスト名: マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)
- アルバム名: 『The Real McCoy』
ジョン・コルトレーンのバンドを支え、力強い左手の重低音でジャズ界に革命を起こしたピアニスト、マッコイ・タイナーのブルーノート移籍第1弾です。 サックスにジョー・ヘンダーソン、ドラムにエルヴィン・ジョーンズを迎え、魂がぶつかり合うような凄まじい熱量で演奏されます。知的なのに泥臭く、激しいのに上品。これぞポスト・バップのダイナミズムだと圧倒される大名盤です。
④ 新時代のトランペットの夜明けを告げた、疾走する知性
- アーティスト名: フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)
- アルバム名: 『Hub-Tones』
圧倒的なテクニックと、突き抜けるような輝かしい音色で1960年代を駆け抜けたトランペッター、フレディ・ハバードの代表作。 それまでのハード・バップの快活さを残しつつも、バックの演奏は完全にモード以降の洗練された空間を作っています。1曲目のタイトル曲『Hub-Tones』の、まるで迷宮を猛スピードで駆け抜けていくようなスリリングなアンサンブルは、息をのむ格好良さです。
新主流派は「モダン・ジャズが行き着いた、大人の完成形」
今回は、1960年代にジャズの知性と熱狂を極限まで高めた『新主流派(ポスト・バップ)』をご紹介しました。
- 時代背景: 1960年代、モードの「自由さ」とハード・バップの「熱量」が融合
- スタイル: ハービーやショーターら、マイルス学派の若き天才たちが牽引
- ここが格好いい: 現代の音楽にも通じる、都会的で少しダークな洗練された響き
この新主流派の登場によって、アコースティックな編成(ピアノ、ベース、ドラム、管楽器)によるジャズは、これ以上ないというところまで完成されてしまいました。
さあ、音楽の可能性をすべて出し尽くした1960年代の終わり。ジャズマンたちはまたしても岐路に立たされます。 一方の若者たちは、全てのルールを捨て去る「フリー・ジャズ」へ。 そしてもう一方の男たちは、世の中で大爆発していた「ロック」や「電子楽器」の波に目を向け始めます。
「だったら俺たちは、電気楽器を使って、ロックのビートでジャズをやろうぜ!」
次回は、1970年代の音楽シーンを激震させた、ド派手でエレクトリックな大人気ジャンル、『マイルス・デイヴィスとフュージョン・ジャズの夜明け(クロスオーバー)』へとお連れします。お楽しみに!

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