爽快なるラテンの熱風!チック・コリアと『リターン・トゥ・フォーエヴァー』の輝ける黄金期

みなさん、こんにちは!ジャズの歴史を鮮やかに追いかけるシリーズ、第9回の主役は、1970年代に世界中で大爆発したフュージョン・ブームのまさに中心地、チック・コリア(Chick Corea)と、彼が率いた伝説のモンスターバンド『リターン・トゥ・フォーエヴァー(Return to Forever / 通称RTF)』です!

前回ご紹介した通り、帝王マイルス・デイヴィスが電気楽器を導入したことで、ジャズはロックやファンクと融合する新しい時代(フュージョン)へ突入しました。

マイルスの右腕としてエレクトリック・ピアノを弾いていた天才チック・コリアは、マイルスのバンドを卒業したあと、こう考えました。

「マイルスのドロドロとした重いファンクも格好いいけれど、俺はもっと親しみやすくて、聴くだけで心がパッと明るくなるような、爽やかで情熱的なエレクトリック・ジャズをやりたい!」

そうして結成されたRTFは、ジャズにラテン(ブラジル)のリズムや、ロックのダイナミズムを完璧にブレンドし、フュージョンというジャンルを誰もが愛する最高のエンターテインメントへと仕立て上げたのです!


目次

ここがシビれる!『リターン・トゥ・フォーエヴァー』の2つの大変化

RTFの面白いところは、活動時期によって「爽快なラテン・ジャズ」から「超絶技巧のハイテク・ロック」へと、その音楽性をガラリと変えている点です。そのドラマチックな2つの黄金期を解説します。

① 前期:カモメが飛ぶ、爽快なブラジリアン・フュージョン(1972〜1973年)

初期のRTFは、ブラジル出身の女性歌手フローラ・プリムの透き通るようなボーカルと、軽快なパーカッションを大フィーチャー。 チックの叩き出すキラキラとしたエレクトリック・ピアノ(フェンダー・ローズ)の音色と相まって、まるで「どこまでも青い南国の海と空、そこを吹き抜ける涼しいそよ風」をそのまま音楽にしたような、最高に心地よい極上サウンドを生み出しました。

② 後期:全員が主役!火花を散らす超絶技巧の宇宙(1974年〜)

メンバーチェンジを経た後期RTFは、当時まだ19歳だった天才ギタリストのアル・ディ・メオラや、超絶ベーシストのスタンリー・クラークらを擁する「最強のテクニシャン集団」へと変貌します。 クラシックの組曲のような緻密な構成と、ヘヴィメタル顔負けの爆音・超高速プレイが融合した、プログレッシブ・ロックのようなスリリングな世界で若者たちを熱狂させました。


これを聴けば一瞬で虜!RTFとチック・コリアの絶対名盤3選

部屋のカーテンを大きく開けて、太陽の光を感じながら、あるいはドライブのお供に大音量で味わいたい大傑作たちです。

① フュージョンの歴史を塗り替えた、爽やかな名盤中の名盤

  • アルバム名: 『Return to Forever』(1972年)

ジャケットに美しく描かれた「白いカモメ」の通り、通称「カモメのチック」として世界中で愛され続ける大名盤。 1曲目のタイトル曲を聴いた瞬間、エレピのキラキラとした音の波が部屋いっぱいに広がり、一瞬で南国のリゾート地へトリップしたような開放感に包まれます。ジャズ初心者から熱烈なオーディオマニアまで、一生愛聴できる美しすぎる1枚です。

② ジャズ史上屈指の超名曲『スペイン』を収録した大ベストセラー

  • アルバム名: 『Light as a Feather』(1973年)

前作の爽快感はそのままに、さらにバンドのグルーヴがハッピーに躍動するRTFの第2作です。 なんといっても、世界中のジャズメンが今でも演奏し続けるチック・コリア最大の超名曲『Spain(スペイン)』が収録されています。クラシックの名曲『アランフェス協奏曲』の切ないメロディから始まり、一転してラテンの手拍子とともに、イントロからエンディングまで一拍の無駄もなく、あまりの格好良さにアドレナリンが止まらなくなる奇跡の名演です。

③ 超高速プレイの連発!ハイテク・フュージョンの頂点

  • アルバム名: 『Romantic Warrior(浪漫の騎士)』(1976年)

こちらは「後期」の超絶技巧スタイルのRTFを代表する大ヒット作。 中世の騎士をテーマにしたファンタジーな世界観の中、チックのシンセサイザー、ディ・メオラの機関銃のような超高速ギター、スタンリー・クラークのバキバキと唸るベースが、お互いに一歩も譲らずに凄まじいスピードで激突します。「人間ってこんなに速く、正確に楽器を弾けるの!?」と、聴いているだけで手に汗握るスリル満点の大傑作です。


チック・コリアが魅せた「音楽の無限の楽しさ」

今回は、1970年代のフュージョン・シーンのアイコンとして時代を引っ張った『リターン・トゥ・フォーエヴァー』と、チック・コリアをご紹介しました。

  • どんなスタイル?: 初期は爽快なラテン調、後期は超絶技巧のハード・ロック調
  • ここが凄い: ジャズの難解さを取り除き、誰もがワクワクするポップさを融合
  • 必聴の1曲: 全人類の宝物である名曲『Spain(スペイン)』

チック・コリアがエレクトリックの機材を使ってこれほどまでにカラフルで楽しい世界を創り上げたことで、フュージョンは世界的な大ブームとなり、日本のT-SQUAREやCASIOPEA(カシオペア)といった伝説のバンドたちにも計り知れない影響を与えました。

さて、チック・コリアが「爽快なラテンと超絶技巧」で世界を魅了していた1970年代半ば。マイルスの遺伝子を受け継いだもう一人の天才が、別のアプローチで世界を踊らせていました。

「シンセサイザーの最先端の宇宙的サウンドと、泥臭いブラック・ファンクを融合させて、クラブ全体をダンスフロアに変えちまおうぜ!」

次回は、これまたフュージョンの大本命。ファンクのノリを極限まで高めたメガヒット作『ハービー・ハンコックとヘッド・ハンターズ』の世界へお連れします。腰を揺らす準備をしておいてくださいね(笑)。お楽しみに!

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