みなさん、こんにちは!ジャズの歴史やジャンル、名盤をわかりやすく紐解くシリーズ。今回は、いつか必ずご紹介しなければならなかった、ジャズ界の「生ける神様」、ルイ・アームストロング(Louis Armstrong)の特集です!
愛称は「サッチモ(Satchmo)」。 トレードマークの白いハンカチを片手に、あのクシャッとした満面の笑顔と、ダミ声のボーカル、そして天まで届くようなトランペットの音色……。ジャズを詳しく知らない方でも、テレビCMなどで一度はその姿や歌声を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
「お茶目なポップスターでしょ?」と思ったら大間違い! 実は彼、「もし彼がいなかったら、現代のジャズだけでなく、ポップスやロックの形さえ変わっていたかもしれない」と言われるほど、音楽の歴史をひっくり返したとてつもない巨人なんです。
今回は、そんなサッチモの何がそれほど凄かったのか、3つのポイントで分かりやすく解説します!
ここが凄い!ルイ・アームストロングが「ジャズの父」と呼ばれる3つの理由
彼が活動を始めた1920年代、ジャズはまだ「ニューオリンズの地方音楽」に過ぎませんでした。それを世界最高峰の芸術にまで高めたのが彼です。
① ジャズを「みんなで合わせる音楽」から「個人のソロ(主役)の音楽」に変えた
初期のジャズは、全員でせーのでメロディをガチャガチャと合奏する(集団即興演奏)スタイルでした。 そこへ登場したルイは、圧倒的なテクニックと表現力で、「ひとりの演奏者が主役になって、即興(アドリブ)でソロを繋いでいく」という、現代まで続くジャズの基本スタイルを1人で作り上げてしまったのです。
② 歌うように楽器を吹き、楽器のように歌った(スキャットの元祖)
彼のトランペットは、まるで人間が感情豊かに歌っているかのように響きます。 さらに凄いのはその歌声です。ある日、録音中に歌詞が書かれた紙を床に落としてしまったルイは、とっさに「ドゥビ・ドゥバ・パッパ♪」と意味のない音を口ずさんで演奏を続けました。これが、ジャズのボーカルテクニックとしてお馴染みの「スキャット」の歴史の始まりと言われています。
③ 人種差別を笑顔で溶かした、世界最初のポップスター
彼が活躍した時代のアメリカは、黒人への人種差別が本当に激しい時代でした。 しかし、ルイの奏でるハッピーな音楽と、チャーミングな人柄は、白人も黒人も関係なく、世界中の人々を虜にしました。音楽の力だけで分厚い差別の壁に風穴を開けた、真のカルチャーヒーローなのです。
これだけは絶対に聴いてほしい!サッチモの究極の名曲・名盤
彼の残した録音は星の数ほどありますが、まずは「これを聴けばサッチモのすべてが分かる」という3つの顔をご紹介します。
① ジャズの歴史を変えた、伝説の超絶ソロ
- アルバム名: 『Hot Fives & Sevens(ホット・ファイヴ&セヴン)』
- 聴くべき一曲: 『West End Blues(ウエスト・エンド・ブルース)』
1920年代、若きルイ・アームストロングがジャズの歴史を完全に書き換えた、音楽史上最も重要な録音群です。 特に『West End Blues』の冒頭、ルイが一人で吹き鳴らすトランペットのファンファーレは、あまりの格好良さと美しさに、当時のすべての音楽家がぶったまげたと言われています。「ここからすべてのモダンジャズが始まった」と言っても過言ではない、聖地のような1曲です。
② 全人類を包み込む、優しさに満ちた世紀のバラード
- 曲名: 『What a Wonderful World(この素晴らしき世界)』
ジャズという枠を超え、人類の財産となったあまりにも有名な名曲です。 晩年のルイが、しゃがれた渋い声で「世界はなんて素晴らしいんだ、赤ちゃんが育ち、彼らは僕たちより多くのことを学ぶだろう……」と語りかけるように歌います。激動の時代を生き抜いた彼が歌うからこそ、一言一言に深い説得力があり、聴くだけで涙が溢れそうになる至高のヒーロー・ソングです。
③ これぞジャズのハッピーな原点!
- 曲名: 『When the Saints Go Marching In(聖者の行進)』
こちらも誰もが知っている超有名曲ですね。 ルイ・アームストロングの魔法にかかれば、どんな曲も最高のエンターテインメントに早変わりします。管楽器たちが陽気にハモり、サッチモが楽しそうにシャウトする。難しい理屈はすべて抜きにして、「あぁ、音楽ってこんなに楽しいものなんだ!」と、お腹の底から笑顔になれる名演です。
マイルスもコルトレーンも、みんなサッチモの子供たち!
今回は、モダンジャズのはるか手前で、ジャズという音楽の「遺伝子」を創り上げたルイ・アームストロングをご紹介しました。
- 何をした人?: ジャズを「主役(ソロ)の音楽」へと進化させた張本人
- ここが凄い: スキャットの元祖であり、トランペットも歌も世界最高峰
- その正体: 人種差別の壁を音楽で超えた、世界初のポップスター
のちにマイルス・デイヴィスがクールなトランペットを吹き、ジョン・コルトレーンが激しいサックスを吹くことになる広大なキャンバスは、すべてこのルイ・アームストロングという一人の天才が用意したものだったのです。
時にはモダンジャズの張り詰めた知性から少し離れて、このジャズの「あたたかい故郷」に帰ってみるのも、本当に贅沢な時間ですよ。
さて、サッチモが耕した大地から始まったジャズの歴史。 次回は、予定通り1970年代の嵐へ!電気楽器とロックのビートを融合させて世界を震撼させた『マイルス・デイヴィスとフュージョン・ジャズの夜明け(クロスオーバー)』をお届けします。どうぞお楽しみに!

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