みなさん、こんにちは!ジャズの歴史とジャンルをわかりやすく解説するシリーズ、第3回の主役は『ビバップ(Bebop)』です!
前回ご紹介した「スウィング・ジャズ」は、大人数のビッグバンドがきれいな楽譜(アレンジ)通りに演奏し、みんなで楽しく踊るポップスでした。
しかし、1940年代に入ると、そのお行儀の良いジャズに退屈した若い黒人ミュージシャンたちが、夜な夜なニューヨークの裏通りにある怪しげな地下のクラブに集まり始めます。
そこで始まったのが、楽譜なんて放り出し、「誰も真似できない猛スピードと、超絶技巧のアドリブでぶつかり合う、スリリングな真剣勝負」でした。
このビバップの誕生によって、ジャズは「踊るためのBGM」から、現代に続く「じっくり聴いてシビれる芸術(モダン・ジャズ)」へと一気に生まれ変わったのです。音楽の歴史を引っくり返した、熱すぎる世界へご案内します!
ビバップってどんな音楽?3つの特徴
「ビバップ(Bebop)」という不思議な名前は、彼らが演奏する目まぐるしいメロディが「ビバップ・ルバップ♪」と聴こえたことに由来すると言われています。その特徴を3つに凝縮して解説します。
① 少人数(コンボ)でのガチンコ勝負
大人数のビッグバンドとは違い、基本は4〜5人(サックス、トランペット、ピアノ、ベース、ドラム)の少人数編成です。 全員が順番にスポットライトを浴び、自分の限界に挑むような即興演奏(アドリブ)を披露します。お互いの音を聴きながらその場で音楽を組み立てていく、緊迫したセッションが魅力です。
② 弾丸のような「猛スピード」と「複雑なメロディ」
ビバップの目的は、ぶっちゃけて言えば「ヘタクソには演奏できない、最高に難しくて格好いい音楽をやろうぜ」という職人たちの意地でした。 そのため、テンポはダンスが不可能なほど超高速になり、メロディはジェットコースターのように激しく上下します。このスピード感に一度ハマると、ロックやファンクにも負けないスリルを感じられます。
③ イントロと終わりだけ合わせて、中身は自由!
ビバップの基本的なルールはとってもシンプルです。
- 全員でテーマ(決まった短いメロディ)を吹く
- 一人ずつ順番に、気が済むまでアドリブソロを爆発させる
- 最後にもう一度全員でテーマを吹いて、バシッと終わる この引き締まった構成が、現代のすべてのモダン・ジャズの基礎フォーマットになりました。
これを聴けば100%シビれる!ビバップの伝説的名盤4選
ビバップの時代を創り上げ、後世のジャズマンたちから「神様」と崇められる天才たちの最高傑作を4枚厳選しました。
① ジャズの歴史を変えた、天才コンビによる「人類の奇跡」
- アーティスト名: チャーリー・パーカー&ディジー・ガレスピー(Charlie Parker & Dizzy Gillespie)
- アルバム名: 『Bird and Diz』
ビバップ、ひいてはモダン・ジャズの最大の生みの親であるサックスの天才チャーリー・パーカー(愛称:バード)と、頬を風船のように膨らませて異次元のハイトーンを吹くトランペットの天才ディジー・ガレスピーによる、絶対に避けて通れない超大名盤です。 二人が並んで弾丸のようなスピードで一糸乱れぬメロディを吹くイントロを聴くだけで、鳥肌が立ちます。スリルとユーモアが奇跡的なバランスで同居した、ビバップの教科書のような1枚です。
② 天才たちが奇跡の集結!最初で最後の豪華すぎるライブ
- アーティスト名: ザ・クインテット(The Quintet)
- アルバム名: 『Jazz at Massey Hall』
カナダのマッセイ・ホールで行われた、ジャズの歴史上最も豪華なメンバーによるライブ録音です。 サックスのパーカー、トランペットのガレスピーに加え、ピアノのバド・パウエル、ベースのチャールズ・ミンガス、ドラムのマックス・ローチという、全員が「歴史上の主役」クラスの5人が集結。裏話として、メンバー同士の仲が悪くステージ裏で喧嘩ばかりしていたそうですが、いざ演奏が始まると、お互いのプライドが火花を散らすような壮絶な名演が生まれました。
③ ピアノの概念をひっくり返した、スピード狂の絶対王者
- アーティスト名: バド・パウエル(Bud Powell)
- アルバム名: 『The Amazing Bud Powell, Vol. 1』
パーカーたちがサックスやトランペットでやっていた猛烈なアドリブを、「ピアノの右手一本」で完璧に再現してみせたのが、このバド・パウエルです。 それまでのジャズピアノの上品なイメージを完全に破壊し、まるで激しい雨が鍵盤に降り注ぐような、圧倒的なスピードと哀愁を帯びたメロディを紡ぎ出します。現代のジャズピアニストで、彼のスタイルの影響を受けていない人は地球上に一人もいない、と言われるほどの聖典です。
④ 新時代のリーダー、若きマイルスが頭角を現した大名盤
- アーティスト名: マイルス・デイヴィス(Miles Davis)
- アルバム名: 『The Savory Musician』など(あるいは初期チャーリー・パーカー・セッション盤)
のちに「ジャズの帝王」と呼ばれるマイルス・デイヴィスですが、実はキャリアのスタートはチャーリー・パーカーのバンドの若手トランペッターでした。 パーカーやガレスピーのような「超絶技巧のスピード狂」たちに囲まれながら、マイルスは「自分はテクニックではなく、一音の美しさと知的なフレーズで勝負しよう」と、すでに独自のセンスを磨いていました。モダン・ジャズの夜明け前を告げる、瑞々しい熱気が詰まった歴史的音源です。
ビバップは「大人のための知的スリル」
今回は、ジャズを芸術の域へと高めた偉大な革命『ビバップ』をご紹介しました。
- 時代と場所: 1940年代、ニューヨークの地下のクラブ
- スタイル: 4〜5人の少人数で、スリリングな即興演奏のガチンコ勝負
- ここが面白い: 誰も真似できない超絶技巧と、一発勝負の緊迫感
チャーリー・パーカーたちの命を削るような凄まじい名演は、今聴いても全く色褪せることなく、私たちの心をゾクゾクさせてくれます。
しかし、この「超高速・超複雑」なビバップが行き着くところまで行った結果、1950年代になると、今度は「ちょっとスピードを落として、もっとクールでお洒落なジャズをやろうよ」という真逆のトレンドが生まれます。
次回は、そんな都会的な静けさと気品をまとった大人気ジャンル、『クール・ジャズ(Cool Jazz)』について解説します。あのマイルス・デイヴィスや、チェット・ベイカーが主役の美しい世界です。お楽しみに!

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