みなさん、こんにちは!ジャズの歴史のドラマを追いかけるシリーズ、第8回の主役は、ジャズの概念を根底からひっくり返し、1970年代の音楽シーンに巨大な爆弾を投下した、『フュージョン(Fusion)/クロスオーバー』の誕生です!
前回(第7回)ご紹介した「新主流派」によって、4人や5人の生楽器(アコースティック)で演奏するモダン・ジャズは、芸術としてこれ以上ないという頂点まで完成してしまいました。
行き着くところまで行ってしまった1960年代の終わり、モダンジャズの帝王マイルス・デイヴィスは、街の若者たちの熱狂に目を向けます。 そこでは、ジミ・ヘンドリックスがエレキギターを激しく歪ませ、ファンクのバンドが強烈な8ビートで若者を踊らせていました。
「スーツを着て、お行儀よく古いジャズを演奏するなんて退屈だ。今一番クールなロックやファンクの熱量を、ジャズにブチ込んでやろうじゃねえか」
そうして始まったのが、ジャズ(Jazz)とロック(Rock)を交差(クロスオーバー)させ、融合(フュージョン)させた、まったく新しいエレクトリック・ジャズの世界です!
フュージョン(クロスオーバー)の夜明けってどんな音楽?3つの衝撃
それまでのジャズの常識をすべて心地よく破壊した、電気仕掛けのジャズ。その特徴を3つに凝縮して解説します。
① 楽器が「プラグイン(電気化)」されたド派手な音響
それまでのピアノは「エレクトリック・ピアノ(ローズ)」やシンセサイザーになり、ベースは「エレキベース」へ、そしてギターはアンプに繋がれて爆音で唸り始めました。 アコースティックの繊細な響きから一転、宇宙空間を飛び回るような、カラフルでダイナミックな未来のサウンドが誕生したのです。
② スウィングから「16ビート&8ビート」の強烈なグルーヴへ
ジャズといえば「チーツー・チーツー♪」というスウィングのリズムがお決まりでしたが、マイルスはこれを禁止。ロックやファンクでお馴染みの、ズクダン・ズクダン♪というストレートで強烈なエイトビートや、ウねるようなファンクのリズムを導入しました。 これにより、ジャズは「じっと座って聴く芸術」から、再び「身体が勝手に動き出すストリートの音楽」へと変貌を遂げたのです。
③ 楽譜もコードも無視!?スタジオ全体を巻き込む即興劇
マイルスが始めた初期のフュージョン(クロスオーバー)は、のちの80年代に流行するお洒落で聴きやすい「スムーズ・ジャズ」とは全く違います。 スタジオに2人のドラマー、3人のピアニストなどを集め、マイルスの合図だけで全員が同時に音を出し、お互いの音を聴きながらウねるような巨大な音楽の渦(ジャム・セッション)を作っていくという、最高にスリリングな実験場でした。
世界を激震させた!エレクトリック・マイルスの絶対名盤2選
マイルスがジャズの歴史の新しい扉をこじ開けた、あまりにも衝撃的な2枚を厳選しました。夜、部屋のボリュームを少し大きめにして体感してみてください。
① 静寂とエレクトリックの美しき融合。新時代のファンファーレ
- アルバム名: 『In a Silent Way』(1969年)
マイルスが本格的に電気楽器を導入した、フュージョン前夜の歴史的傑作です。 ハービー・ハンコック、チック・コリア、ジョー・ザヴィヌルという、のちに70年代フュージョン界のトップに君臨する天才ピアニスト3人を同時にエレクトリック・ピアノに座らせ、若きギタリストのジョン・マクラフリンを迎えて録音されました。 アルバム全体に、朝霧が立ち込める湖のような静けさと、エレピのキラキラとした美しい浮遊感が漂う、今聴いても恐ろしく洗練されたアンビエント(環境音楽)のような大名盤です。
② ジャズ史上最大の「問題作」にして、フュージョンの聖典
- アルバム名: 『Bitches Brew(ビッチェズ・ブリュー)』(1970年)
これぞジャズの歴史を完全に変え、全米のロックチャートにも殴り込みをかけた怪物アルバムです。 ジャケットのサイケデリックなアートワーク通り、中身はドロドロとした熱いファンクのエネルギーと、ジャズの即興が見事に融合(フュージョン)した、とてつもない爆音の世界。大人数でカオスのように鳴り響くリズムの中を、マイルスの鋭いトランペットが引き裂くように疾走します。一度ハマると抜け出せない、麻薬的な格好良さを持つ2枚組の大大傑作です。
マイルスが撒いた種から、70年代フュージョンの黄金期へ
今回は、ジャズに電気という命を吹き込み、ロックの時代とガチンコで融合させた『フュージョン・ジャズの夜明け』をご紹介しました。
- 時代背景: 1960年代末、ロックやファンクの熱狂に対抗してマイルスが発明
- スタイル: エレキギター、エレピ、エレベを導入し、8ビート・16ビートでウねる
- ここがヤバい: 綺麗なBGMではなく、天才たちがスタジオで火花を散らすド迫力の音響
マイルスが『Bitches Brew』などのアルバムで新しい音楽のジャンルを切り開いた結果、このバンドに参加していた若いメンバーたちが、それぞれ独立して1970年代のフュージョン・ブームを爆発させることになります。
- チック・コリア率いる 「リターン・トゥ・フォーエヴァー」
- ジョー・ザヴィヌルとウェイン・ショーター率いる 「ウェザー・リポート」
- ハービー・ハンコック率いる 「ヘッド・ハンターズ」
彼らが作った、日本でも大流行する「格好よくて、テクニカルで、最高に爽快な70年代フュージョンの全盛期」のお話は、また次回以降にじっくりと。
歴史がどんどん現代に近づいて、ますますエキサイティングになってきましたね。お楽しみに!

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