みなさん、こんにちは!ジャズの歴史とジャンルをわかりやすく解説するシリーズ、第4回の主役は『クール・ジャズ(Cool Jazz)』です!
前回ご紹介した「ビバップ」は、ニューヨークの地下クラブで天才たちが猛スピードの超絶技巧を競い合う、いわば「熱血・汗だくのガチンコ格闘技」のような音楽でした。
しかし、1950年代に入ると、その激しすぎる音楽にちょっと疲れを感じ始めたミュージシャンたちが、全く新しいトレンドを作り出します。
それが、「余分な音を削ぎ落とし、リラックスした、どこまでも知的で美しいジャズ」。
その名の通り、聴くだけでお部屋の空気を一瞬で「涼しく、お洒落で、洗練された空間」に変えてしまう、大人のための極上ジャンルです。ジャズが持つもう一つの最高にシブい一面を、一緒に覗いてみましょう!
クール・ジャズってどんな音楽?3つの魅力
激しく燃え上がるビバップが「火」なら、静かに佇むクール・ジャズは「氷」。そのスタイリッシュな特徴を3つに凝縮して解説します。
① 「汗をかかない」リラックスした心地よさ
ビバップのように楽器をこれでもかと吹き鳴らすのではなく、一音一音をとても大切に、間(静寂)を活かしながら演奏します。 テンポもゆったりとした心地よいものが多く、叫ぶような激しさはありません。クールに、スマートに、大人の余裕を感じさせる演奏が魅力です。
② クラシックのような優雅なアレンジ
クール・ジャズのもう一つの特徴は、白人の優秀なミュージシャンたちが多く参加したことです。 彼らが学校で学んだクラシック音楽の高度な知識(美しい和音の重ね方や、綿密な楽曲の構成)をジャズに取り入れたため、まるでヨーロッパの室内楽を聴いているかのような、気品あふれる上品なサウンドが生まれました。
③ 西海岸(ウエストコースト)の爽やかな風
このクール・ジャズのブームは、アメリカの東海岸(ニューヨーク)だけでなく、太陽がまぶしい西海岸(ロサンゼルスやサンフランシスコ)でも大爆発しました。 西海岸で生まれたものは特に「ウエストコースト・ジャズ」とも呼ばれ、ハリウッド映画のスタジオミュージシャンたちが奏でる、軽快で、どこか海風を感じるような爽やかなサウンドが特徴です。
これを聴けば一瞬でお洒落!クール・ジャズの名盤4選
いつもの日常を、まるで海外の高級ホテルのラウンジや、お洒落なセレクトショップのような雰囲気に変えてしまう極上の4枚を厳選しました。
① すべてはここから始まった!帝王マイルスが放った世紀の予告編
- アーティスト名: マイルス・デイヴィス(Miles Davis)
- アルバム名: 『Birth of the Cool(クールの誕生)』
タイトルの通り、これぞ「クール・ジャズ」というジャンルそのものをこの世に誕生させた、歴史的な超大名盤です。 当時19歳だった天才マイルス・デイヴィスが、一風変わった9人編成のバンドを率いて、それまでのうるさいビバップを完全に黙らせるような、一糸乱れぬ美しく冷ややかなアンサンブルを完成させました。ジャズの歴史の大きな分かれ道となった、絶対に持っておくべき聖典です。
② 母性をくすぐる甘い歌声と、天才的なトランペットの魔法
- アーティスト名: チェット・ベイカー(Chet Baker)
- アルバム名: 『Chet Baker Sings』
ウエストコースト・ジャズのアイコン(象徴)であり、映画俳優のような端正なルックスで世界中の女性を虜にしたチェット・ベイカーの最高傑作です。 彼の吹くトランペットは、驚くほど優しく、どこか哀愁を帯びていて耳にすんなりと溶け込みます。さらに、このアルバムでは彼自身の「ボーカル(歌声)」も披露。ちょっぴり中性的で、ささやくような甘いバラードは、夜、お部屋の明かりを少し落として聴くのにこれ以上ない最高の相棒になります。
③ 5拍子の魔法!世界中を虜にした最もスタイリッシュなカルテット
- アーティスト名: ザ・デイヴ・ブルーベック・カルテット(The Dave Brubeck Quartet)
- アルバム名: 『Time Out』
名門大学でクラシックを修めた知性派ピアニスト、デイヴ・ブルーベックが率いる伝説のグループです。 このアルバムに収録されている『Take Five(テイク・ファイヴ)』は、当時のジャズではあり得なかった「5拍子」という変拍子を取り入れながら、信じられないほどキャッチーで格好いい名曲として世界中で大ヒットしました。ポール・デスモンドが吹くサックスの音色は、まるで上質なシルクのように滑らかで、クール・ジャズの美しさの頂点と言えます。
④ 哀愁のバリトンサックスが織りなす、これぞ西海岸の決定盤
- アーティスト名: ジェリー・マリガン(Gerry Mulligan)
- アルバム名: 『Gerry Mulligan Quartet』
クール・ジャズの立役者の一人であるジェリー・マリガンが、なんと「バンドにピアノを置かない(ピアノレス)」という驚きのアレンジで挑んだ名盤です。 ピアノという和音の屋根がないからこそ、マリガンの吹く低音サックス(バリトンサックス)と、チェット・ベイカーのトランペットの2本のメロディが、まるで空中を美しくダンスするように絡み合います。軽やかで、スマートで、どこかお茶目な、西海岸の最高の空気感がギュッと詰まっています。
クール・ジャズは「がんばらない、最高の贅沢」
今回は、ジャズを都会的でお洒落なライフスタイルに溶け込ませた偉大なスタイル『クール・ジャズ』をご紹介しました。
- 時代と背景: 1950年代、激しすぎるビバップへのアンサーとして誕生
- スタイル: 音数を抑え、リラックスした知的なアンサンブル
- ここが心地いい: クラシックのような優雅さと、西海岸の爽やかな空気感
忙しい毎日の終わりに、頭をすっきりとリセットしたいとき、あるいは休日の穏やかな朝、コーヒーの香りと一緒に楽しむのに、これほど完璧な音楽はありません。
しかし、ジャズの歴史は本当に面白いものです。東海岸(ニューヨーク)の黒人ミュージシャンたちは、この白人中心のスマートで綺麗すぎる「クール・ジャズ」の流行を見て、今度はこう思いました。 「おいおい、綺麗にまとまっちまって、ジャズの根底にある『熱いブルースの魂』を忘れてやしないか?」
次回は、そんな反骨精神から生まれた、黒人特有のアーシー(泥臭い)で、ファンキーで、お腹の底から熱くなれるモダンジャズの大黄金時代、『ハード・バップ(Hard Bop)』について解説します。あのアート・ブレイキーや、ソニー・ロリンズが爆発する時代です。お楽しみに!

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