みなさん、こんにちは!これまで数々の「ジャズの名曲」をご紹介してきましたが、今回からは少し視点を変えて、「ジャズのジャンルと歴史」をわかりやすく解説する新シリーズをスタートします!
一口に「ジャズ」と言っても、時代によってそのスタイルはガラリと変わります。お洒落で静かなジャズもあれば、激しくて熱いジャズもあります。その違いを知ると、音楽を聴くのが何倍も楽しくなりますよ。
記念すべき第1回目は、すべてのジャズの生誕地であり、絶対的な原点である『トラディショナル・ジャズ(Traditional Jazz)』です。
「ニューオーリンズ・ジャズ」や「ディキシーランド・ジャズ」とも呼ばれるこのジャンル。私たちが普段カフェなどで耳にする洗練されたジャズとは全く違う、「陽気で、泥臭くて、お祭りのように賑やかな音楽」なんです。
ジャズがどのようにして産声を上げたのか、その熱いルーツを一緒に探りにいきましょう!
トラディショナル・ジャズってどんな音楽?
トラディショナル(伝統的)ジャズは、1900年代初頭から1920年代にかけて、アメリカ南部の港町ニューオーリンズで生まれました。
誕生の背景:お祭りとパレードの音楽
ニューオーリンズは、フランスやスペイン、アフリカなど、様々な人種と文化が混ざり合う特別な街でした。ここでは、お祭りや結婚式、さらにはお葬式(!)の時でさえ、ブラスバンドが街をパレードして音楽を演奏する文化がありました。
ヨーロッパの軍隊の行進曲(マーチ)の楽器を使って、アフリカ系の黒人たちが自分たちのノリ(リズム)で演奏し始めたこと。それが、トラディショナル・ジャズの始まりです。誰もが知っている名曲『聖者の行進(When the Saints Go Marching In)』は、まさにこの時代のお葬式の帰り道で、陽気に演奏されていたパレード曲なんですよ。
音楽的な特徴:みんなで同時にアドリブ!
トラディショナル・ジャズの最大の特徴は、「集団即興演奏(みんなで一斉にアドリブをすること)」です。
トランペットが主役のメロディを吹き、その周りでクラリネットが高い音でピロピロと飾り付けをし、トロンボーンが低い音で「ブウォーン」と合いの手を入れる。一人ひとりが順番にソロを吹く現代のジャズとは違い、みんなでガヤガヤと同時に演奏を重ねるため、おもちゃ箱をひっくり返したような最高にハッピーなサウンドになります。
また、歩きながら演奏するパレードが起源なので、ピアノやウッドベースは使わず、持ち運びができる「バンジョー(ギターの仲間)」や「チューバ(巨大な金管楽器)」がリズムを刻んでいるのも大きな特徴です。
これを聴けばわかる!トラディショナル・ジャズの歴史的名盤3選
当時の空気感を真空パックしたような、歴史的かつ最高に楽しい名盤を3枚厳選してご紹介します!音質は古いですが、そこから溢れ出る圧倒的なエネルギーを感じてみてください。
① ジャズの神様が残した、人類の宝物
- アーティスト名: ルイ・アームストロング(Louis Armstrong)
- アルバム名: 『The Complete Hot Five and Hot Seven Recordings』
ジャズの歴史を語る上で、絶対に避けては通れない「ジャズの父」ことルイ・アームストロング(愛称サッチモ)の1920年代の録音です。
彼がすごいのは、「みんなでガヤガヤ演奏する」のが当たり前だった時代に、「圧倒的なテクニックで、一人で目立つソロ(即興演奏)を吹く」というスタイルを世界で初めて確立したこと。彼の輝かしいトランペットの音色と、ダミ声の陽気なボーカルは、まさに「音楽の奇跡」です。
② ジャズの黎明期を支えた伝説のバンド
- アーティスト名: キング・オリヴァー(King Oliver)
- アルバム名: 『King Oliver’s Creole Jazz Band: The Complete Set』
ルイ・アームストロングの師匠であり、当時のニューオーリンズで一番人気だったトランペット奏者、キング・オリヴァーのバンドの録音です。若き日のルイ・アームストロングもこのバンドに参加しています。
「これぞニューオーリンズ・ジャズ!」という、複数の管楽器が絡み合う集団即興演奏の完成形がここにあります。バンジョーのチャカチャカとしたリズムと、土臭いけれど生命力に溢れた演奏は、聴いているだけで自然と体が動いてしまいます。
③ 「俺がジャズを発明した」と豪語した天才
- アーティスト名: ジェリー・ロール・モートン(Jelly Roll Morton)
- アルバム名: 『Jelly Roll Morton: 1923–1924』など
「ジャズとストンプ(足踏みするようなリズム)を発明したのは俺だ」と豪語していた、少し胡散臭くも圧倒的な才能を持った天才ピアニストの録音です。
ラグタイムと呼ばれる跳ねるようなピアノのスタイルをジャズに取り入れ、洗練された作曲とアレンジを行いました。彼が弾くピアノは、まるで一人でオーケストラを演奏しているかのように華やかで、初期のジャズがどれほどエンターテインメント性に富んでいたかがよくわかります。
ジャズの歴史は「ハッピーなエネルギー」から始まった!
今回は、新シリーズ「ジャズのジャンル解説」の第1弾として、すべての原点である『トラディショナル・ジャズ』をご紹介しました。
- 生まれた場所: アメリカ南部の港町ニューオーリンズ
- ルーツ: マーチングバンドやパレードの音楽
- 特徴: 管楽器がみんなで一斉にアドリブする、陽気なお祭り騒ぎ
のちの時代(1940〜50年代)になると、ジャズはマイルス・デイヴィスたちによって芸術的でクールな「モダン・ジャズ」へと進化していきますが、その根底にはいつも、このニューオーリンズで生まれた「音を合わせる純粋な喜び」が流れています。
休日のよく晴れた朝や、気分をパッと明るくしたいときには、ぜひこのトラディショナル・ジャズを流してみてください。100年前のアメリカの陽気な空気が、あなたの部屋をハッピーにしてくれますよ!
次回は、ジャズが全米の大衆音楽として爆発的な人気を誇った黄金時代、『スウィング・ジャズ』について解説します。お楽しみに!

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